リストップ 日本上陸の戦略を聞く(iNTERNET magazine 2004年7月)
日本ではキーワード広告といえばオーバーチュア、グーグルの2社だけに注目が集まっている。だがアメリカやヨーロッパに目を転じれば、2強の傘下に入らず、独立路線を歩むキーワード広告企業が存在している。
その最右翼が、FindWhat.com社だ。同社は1998年の創業。今年の第1四半期、前年から50%以上もアップした約2470万ドルもの売上げを確保し、2004年通期の業績見通しを上方修正するなど、絶好調のまま突っ走っている。ExciteやWebcrawler、CNET's Search.com、InfoSpace's MetaCrawlerなどのポータルサイトに検索エンジンを提供しており、検索クエリー数も非常な勢いで増えつつあるようだ。
また今年初めには、欧州のキーワード広告企業Espotting社を1億6300万ドルで買収。EspottingはYahoo! UKやYahoo! Ireland、Ask Jeeves、UK Plus、easyInternetCafeなどに検索エンジンを提供しており、欧州域内では1、2位を争うキーワード広告企業として知られている存在だ。
そしてこのFindWhat.comが、とうとう日本にも上陸してきた。といっても日本法人を立ち上げたわけではない。総合商社の三井物産と提携し、FindWhat.comのシステムを使ったキーワード広告サービス「リストップ」をこの7月にサービスインさせたのである。
唐突に登場した雰囲気もあるリストップだが、準備は周到に続けられてきたようだ。最初に三井物産との提携が発表されたのは昨年9月で、この後今年3月には試験サービスを開始し、日本語ローカライズなどを進めていた。
オーバーチュアとグーグルの2強がヤフーやMSNなどの大手ポータルサイトをがっちりと押さえてしまっている日本市場で、参入の余地はあるのだろうか?
三井物産でリストッププロジェクトのマネージャを務めている斉藤尚弘氏に、そのあたりの疑問を直撃してみた。
――オーバーチュア、グーグルと比べ、リストップの売りは何なのでしょうか?
斉藤氏 両社は大手ポータルから巨大なトラフィックを誘導していますが、リストップはもう少しニッチなところを狙っています。基本的には、オンラインショッピングサイトを開いている企業が利用しやすいキーワード広告を、コンバージョンレート(成約率)が高そうなショッピング専門サイトなどに配信するという戦略です。
――価格も安めに設定するということでしょうか。
斉藤氏 そうです。オーバーチュアやグーグルでは最低落札価格も高めで、しかも人気キーワードとなると実際に落札される価格は数十円や数百円にまで達しています。小規模なショッピングサイトにとってはかなり高額だと思います。リストップは最低落札価格を5円に設定し、実際の落札金額も5円からせいぜい最高10~20円程度に抑えられるのではないかと考えています。
――現在広告を配信しているサイトは。
斉藤氏 価格comをはじめ、日経ネットやインターネット書店「Jbook」、ISPのJENSなどに提供しています。交渉中やテスト中のサイトも数多くあり、年内には20~30サイトにまで増やしたいと考えています。
――対オーバーチュア、グーグル戦略は?
斉藤氏 もともとポータルサイトや検索エンジンを独自で持っておらず、ヤフーのような大きなトラフィックがあるわけではないので、真っ向勝負ができるとは思っていません。あくまでリスティングのプロバイダとしてサイトに広告を供給し、専業事業者として提携サイトの広告売上げアップに協力していきたいと思っています。
――今年の目標は。
斉藤氏 売上げの具体的数字は申し上げられませんが、とりあえず今年は来期への基盤作りの年です。提携サイトの獲得に全力を挙げ、来期のジャンプアップにつなげたいと考えています。
三井物産のインターネットビジネスといえば、最近はアフィリエイトの「リンクシェア」に注目が集まっている。他にもポイントプログラム「ネットマイル」やショッピングサーチ「アラジン」、Eメールマーケティング「ミームス」などBtoCを中心とした事業展開を進めている。リストップ事業については、従来のインターネットビジネスを補完する形で、さらにチャネルを増やしていくという戦略の一環として位置づけられているようだ。
真っ向勝負をかけずにニッチを目指していくという戦術は、非常に興味深い。特にショッピング系の検索エンジンビジネスは今後成長が期待される分野となっているだけに、リストップの動向は今後注目を集めそうだ。
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